カナダの国土を象徴する猛禽といえばハクトウワシ(Bald Eagle/バルドイーグル)ですが、ビクトリアでは特別な場所へ行かなくても出会えます。 ダウンタウンから歩ける公園にも、海沿いの道の上空にもいます。この記事では、ビクトリア近郊でハクトウワシを見られるスポットと時期双眼鏡が必要かどうか、そして空振りしないための注意点を、BC Parksなどの公的情報と私自身の目撃体験をもとにご案内します。

ハクトウワシはどんな鳥か

翼を広げると2メートルを超えます。 カナダ国立公園局(Parks Canada)の説明によれば、生息域では最大級の鳥です。

観察する前に知っておくと役に立つのが、若い個体には白い頭がないということです。

項目内容
翼開長2メートル超
白い頭と尾になる時期約4歳から。それまでは全身が茶色
繁殖を始める年齢4歳ごろ。つがいは生涯続く
卵の数平均1〜3個
巣立ちまで巣にとどまるのは10〜14週
食べもの自分で獲る魚が中心。死んだ動物(腐肉)を食べたり、ほかの動物から奪ったりもする
保護状況COSEWIC(カナダ絶滅危惧種委員会)の評価は「危機にない(not at risk)

「茶色いから別の鳥だろう」と見送ってしまうと、若いハクトウワシを見逃します。 大きさは成鳥とほとんど変わらないので、2メートル近い翼で悠々と飛んでいたら、まずハクトウワシを疑ってよいと思います。

なお、この鳥がふつうに見られるようになったのは最近のことです。1960〜70年代には殺虫剤DDTの影響で繁殖率が大きく落ち込み、そこから回復してきました。現在も1年目を生き延びるのはおよそ半数とされています。

いつ見られるのか

一年を通じて見られますが、数が増える時期がはっきりしています。

時期状況
12月〜冬もっとも数が増える。 産卵を終えた鮭の死骸が川辺に並び、それを目当てに集まる
春(3〜4月)繁殖の季節。海沿いや山を背景に飛ぶ姿
ビクトリア近郊で営巣する。同じ巣を何年も使う
秋(10〜11月)鮭は遡上しているが、ワシはまだ集まっていない

秋の落とし穴に注意してください。 ハクトウワシが食べるのは、産卵を終えて力尽きた鮭の死骸です。生きて泳いでいる鮭を襲うわけではありません。そのため鮭の遡上のピーク(11月中旬〜下旬)に行っても、ワシの数はまだ増えていないことがあります。

鮭を見たいのか、ワシを見たいのかで、行く月が1か月ほどずれます。

街なかで見られるスポット

ビクトリアのよいところは、ワシを見るのに遠出がいらないことです。 まずはダウンタウンから歩ける2か所から。

スポット行き方向いている時期必要なもの
ビーコンヒルパークダウンタウンから徒歩圏通年(夏は営巣期なし(双眼鏡があるとよい)
ダラスロード沿い同上(公園の南に接する)通年なし
ゴールドストリーム州立公園車で約20分(北西約16km)12月〜冬車・双眼鏡
ホエールウォッチングツアーダウンタウンの港から出航春〜秋予約・料金

ビーコンヒルパーク(ダウンタウンから徒歩圏)

ダウンタウンから歩いて行けるスポットです。公園内の高い木の上に巣があります。

ビーコンヒルパークの芝生と花壇、奥にそびえる背の高い針葉樹

ダラスロード沿い(海沿いの道)

ビーコンヒルパークの南に接する海沿いの道です。海風による上昇気流をつかんで滑空する姿が、日常的に見られます。

ダラスロードの草原越しに広がるフアン・デ・フカ海峡と対岸の陸地

崖の上を歩きながら空を見るだけなので、装備も予約も要りません。 散歩コースとしても気持ちのよい道です。

なお少し前になりますが、ダラス・ロードの東端にあるロス・ベイ墓地(Ross Bay Cemetery)で、つがいが同じ木にずっと滞在していることが地元で話題になっていました。いま同じ状況とは限りませんが、大きな木のある場所には注意を向けてみてください。

足を伸ばして数を見るなら

ゴールドストリーム州立公園(12月〜冬)

数を見たいならここです。 BC Parks(ブリティッシュコロンビア州立公園)によれば、河口の立ち入りが禁止されたことで野生動物が回復し、かつてはめったに見られなかったハクトウワシが、いまでは遡上期に数多く集まるようになりました。夏には営巣もします。

ゴールドストリーム川の河口に広がる干潟と、フィンレイソン入江を囲む森の斜面

観察は、ビジターセンター近くの河口にある観察デッキから行います。BC Parksは、ここから冬にワシが群がって餌をとる様子がよく見えると説明しています。河口そのものは、ボートを含めて立ち入りが禁止されています。

ビクトリアの北西約16キロメートル、車で20分ほどです。

海に出る:ホエールウォッチングツアー

船から見るという選択肢もあります。 タイミングが合えば、水面へ急降下して魚をつかんで飛び去る場面に出会えることがあります。

針葉樹の梢にとまるハクトウワシ。白い頭と尾が青空にくっきり見える

足を伸ばすなら:トフィーノ

バンクーバー島の西海岸、トフィーノ(Tofino)でも見たことがあります。春先(4月ごろ)、大きな山を背景に大空を舞う姿でした。ビクトリアからは車で4時間以上かかるため、ワシだけを目的に行く場所ではありませんが、西海岸を訪れる予定があるなら空も見上げてみてください。

双眼鏡があるかどうかで体験が変わります

「見える」と「観察できる」は別です。

距離の目安見えかた
30メートルほど(大きな木にとまっている)肉眼でも十分に判別できます
40メートルほど(カラスとの空中戦)肉眼で追えます
50メートルほど(優雅に飛んでいる)肉眼で「いる」と分かります

いずれも肉眼で存在は分かります。ただし、鋭い眼光や羽の質感、白い頭をはっきり観察するには双眼鏡が必要です。

写真を撮るなら

上の距離の目安は、そのままレンズ選びの目安にもなります。 翼開長2メートルの鳥を30〜50メートル先から撮ると、標準的なレンズでは画面のごく一部にしか写りません。この記事の一番上の写真がまさにそれで、「いるのは分かるが小さい」という写り方になっています。

  • とまっている姿を大きく写したいなら、望遠側が長いほど有利です
  • 飛んでいる姿は、距離が変わり続けるうえ空が明るいため、露出が背景の空に引っ張られて鳥が暗くなりがちです
  • 海沿いや川辺は逆光になりやすいので、太陽を背にできる位置を探すと色が出ます

朝の斜めの光は、羽の質感が出やすい時間帯です。 混雑を避ける意味でも、早朝は撮影に向いています。

ただし、写真のために近づかないでください。 巣の周辺では距離を保つことが法律で求められています(後述)。距離を詰めるのではなく、レンズと待つ時間で解決するのが、この鳥との付き合い方です。

ゴールドストリームでのワシ鑑賞で空振りしないための3つのポイント

ハクトウワシは野生動物なので、行けばいつでも見られるわけではありません。 よくある空振りは、原因がだいたい次の3つに絞られます。

#空振りの原因こうする
1時期が早すぎる12月以降に行く
2時間帯が遅い平日の早朝に行く
3潮を見ていない干潮の時間に合わせる

1. 時期が早すぎる → 12月以降に行く

11月上旬に「たくさんいるだろう」と出かけても、一羽もいないことがあります。

ワシが集まるのは産卵が終わった後だからです。ゴールドストリームで数を狙うなら、12月以降を見てください。

2. 時間帯が遅い → 平日の早朝に行く

警戒心の強い鳥です。 人が増える日中は、人が近づけない山奥の高い木へ移動してしまいます。

日曜日の昼過ぎに行って空振り、という話は珍しくありません。平日の早朝が確実です。

3. 潮を見ていない → 干潮の時間に合わせる

ワシの餌場になるのは、河口に広がる泥の干潟です。

満潮の時間帯は干潟が水に沈み、餌場そのものが消えます。 出かける前に潮の満ち引きを確認しておくと、無駄足を避けられます。

観察するときに守ること

ハクトウワシの巣は、BC州の法律で保護されています。

営巣期に人が近づきすぎると、親鳥が巣を離れ、卵やひなが命を落とすことがあります。遠くから静かに見るのが、結果としていちばんよく観察できる方法でもあります。

まとめ

ビクトリア近郊のハクトウワシ観察について、押さえておきたい点をまとめます。

  • 一年を通じて見られるが、数が増えるのは12月〜冬
  • 鮭のピーク(11月中旬〜下旬)とワシのピーク(12月以降)は1か月ほどずれる。 産卵後の死骸を食べに来るため
  • 手軽なのはビーコンヒルパークダラスロード。ダウンタウンから歩けて、装備も予約も不要
  • 数を見たいならゴールドストリーム州立公園(車で20分・冬)。観察は河口の観察デッキから
  • 翼開長は2メートル超。白い頭になるのは約4歳からで、若い個体は全身が茶色
  • 肉眼でも存在は分かるが、双眼鏡(8〜10倍)があると体験が変わる
  • 空振りを避けるには「12月以降」「平日の早朝」「干潮の時間」の3つ
  • 巣は通年で法律に守られています。 近づかず、驚かせないこと

「特別な場所へ行かないと見られない鳥」ではありません。散歩のついでに空を見上げる習慣をつけるだけで、出会える確率はかなり上がります。

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