ハイキングの装備は、一度にすべて揃える必要はありません。歩くコースが変われば、必要なものも変わります。 この記事では、ビクトリア周辺で歩く前提で、初級コースの最低限から、雨対策を本気でやる中級ウェストコーストトレイルに向けた本格装備までを3段階に分けてご案内します。あわせて、私が実際にやってしまった失敗もご紹介します。

装備は「段階で」揃える

段階歩くコースの例要になるもの
第1段階マウントダグラス、エルク/ビーバー湖など半日のコースレインジャケット、グリップのある靴、水と行動食
第2段階イースト・スークのコースト・トレイルなど一日のコース上下の防水透湿ウェア、二重防水のパッキング、ゲイター
第3段階ウェストコーストトレイルなど数日の縦走完全防水の大型ザック、浄水器、衛星通信機

ビクトリア周辺の装備選びには、この土地ならではの前提があります。とにかく泥と、濡れた岩場と、大きな木の根が多いことです。乾いて見える岩や根が、驚くほど滑ります。

第1段階:半日のコースを歩くための最低限

まずBC Parks(ブリティッシュコロンビア州立公園)が挙げている必携品が土台になります。

  • ナビゲーション(地図・コンパス・GPS)
  • 予備の食料・水・衣類
  • ポケットナイフ
  • 救急セット
  • 日焼け止め
  • ホイッスルなど音の出る合図の道具
  • 懐中電灯と予備の電池
  • 緊急用のシェルター
  • 火起こしの道具
  • 衛星通信機器

BC Parksは、電波の届かない場所が多いことから携帯電話を当てにしないこと、出発前に「どの公園に行くか」を誰かに伝えておくことをすすめています。

ソンブリオビーチ付近のハイキングトレイル。木の根がトレイル一面を押し上げている

そのうえで、ビクトリアで効くものと効かないものがあります。

失敗から学んだこと

装備の話は、うまくいった話より失敗のほうが役に立つと思います。すべて私が実際にやったことです。

やってしまったこと何が起きたか
マウントダグラスだからと普通のスニーカーで登った乾いて見えた岩場と露出した木の根で滑りまくり、足首をひねりかけた
薄手のジャケットを「重いから」と車に置いてきたダウンタウンは快晴の25度前後。マウント・ワークの頂上は冷たい霧で体感一桁
2時間で戻れるだろうと小さなペットボトル1本で出発思ったよりアップダウンが激しく、途中で水が尽きて脱水気味になり頭痛
安い防水ジャケットを着てイースト・スークへ透湿性がゼロで、自分の汗と結露で内側がサウナ状態。中の服までびしょ濡れ
写真を撮りながら歩いていた沿岸部の冷たい風でスマホのバッテリーが急低下。充電切れで時計も地図も使えなくなった

マウント・フィンレイソンの頂上から景色を眺める。どんよりした雲に覆われ、街より外気が冷たい

街と山頂は別の気候だと考えてください。 標高が少し上がるだけで、霧と風で体感温度が大きく下がります。「重いから置いていく」の判断が、いちばん危ないと感じています。

BC Parksも、低体温症の兆候として「混乱、思考や発話の困難」「歩行困難、協調運動の欠如」を挙げています。

第2段階:一日のコースへ——雨対策を本気でやる

ここからは、「濡らさない」ことに投資する段階です。

霧雨のかかるソンブリオビーチ。海も林も白く煙り、肌寒い

重ね着(レイヤリング)の考え方

雨具の前に、その下に何を着るかです。3つの層で考えます。

役割素材の例
肌に近い層汗を素早く逃がす化繊、またはメリノウール
中間層空気をためて保温するフリースなど
外側雨と風を防ぐ防水透湿のシェル

避けたいのはコットン(綿)です。 Tシャツもパーカーも、一度濡れると乾かず、体温を奪い続けます。 ビクトリア周辺は霧と小雨が多く、汗もかきます。カナダ国立公園局がウェストコーストトレイルの必携品に挙げているのも「濡れても暖かく、乾きの速いインナー」です。初心者がいちばん陥りやすい落とし穴だと思います。

上下そろえた防水透湿ウェア

ゴアテックス(Gore-Tex)やパーテックス(Pertex)といった防水透湿素材を使った、登山用のレインジャケットとレインパンツの上下を用意します。前述のとおり、透湿性のない安価な雨具は、内側が汗で濡れて逆効果になります。

「二重防水」でザックの中身を守る

ザックカバーは外側の対策です。表面を流れる雨は防げますが、背中との隙間から伝う雨水や、強風でカバーがめくれた隙間からの浸水は防げません。

そこで内側の対策を重ねます。ザックの中に防水袋(パックライナーや頑丈なゴミ袋)を敷き、その中に寝袋・着替え・電子機器をすべて入れる。この二重防水なら、川で転倒しても中身は乾いたままです。

足元は「靴・ゲイター・靴下」の3点で

  • 登山靴:出発前に防水スプレーを念入りにかけておく
  • ロングゲイター(泥除けスパッツ):泥が靴の中に入ると足の皮がふやけ、強烈なマメができます。これを防ぎます
  • メリノウールの靴下:濡れても保温性を失わず、クッション性も保ちます

冬に歩くなら足すもの

BC Parksの冬向けの案内では、次が挙げられています。

第3段階:ウェストコーストトレイルへ

カナダ国立公園局(Parks Canada)が示している基準で、まず押さえたいのが重量です。

ザックの重さは、体重の25〜30%以内。 これを超えたら中身を見直すよう案内されています。

濃霧と強風のトフィーノ・ロングビーチの浜辺

公式に挙げられている必携品から、特に押さえておきたいものを抜き出します。

品目公式の指定
登山靴足首とアーチを支える高品質のもの。柔らかいゴム底のほうが滑りやすい路面で効く新品の靴をこの山行で慣らさない
テント防水フライ付きが必須
寝袋化繊が望ましい(ダウンは濡れると保温力を失う)。防水袋に入れてザックの中へ
ザックパッド入りのヒップベルト付き。厚手のゴミ袋か防水ライナーで内張り
食料高カロリー・軽量・短時間で調理できるもの。缶とガラス瓶は不可
時計潮汐表を読むために必要
ロープ1グループあたり15メートルの化繊ロープ
その他ゲイター、トレッキングポール、軽量ストーブと燃料、救急セット

持ち込めないものとして、斧・銃器・ベアバンガー・ペットが明示されています(介助動物は除く)。

シーズンや予約の仕組みは、ウェストコーストトレイルの全体像をまとめた記事でご説明しています。

どこで買うか

ビクトリア市内には、段階に応じて選べるお店がそろっています。

お店所在地向いている段階特徴
MEC(Mountain Equipment Company)1450 Government St初級〜中級カナダ最大手のアウトドア店。品揃えが広い
Mountain Warehouse3147 Douglas St, Unit 222(メイフェア・モール内)初級手頃な価格のレインジャケットやトレイルシューズが見つかる
Grove Outdoors612 Johnson St初級ビクトリアで唯一のアウトドアギア委託販売店。「1回きりのハイキングだから安く抑えたい」ときに
Robinson's Outdoor Store1307 Broad St中級創業から96年以上という地元の老舗。登山靴の品揃えとフィッティングに定評があります
Valhalla Pure Outfitters1824 Store St中級〜上級ブリティッシュコロンビア州発祥。衛星通信機や軽量浄水器など本格的なギアが揃う。スタッフに現役のハイカーが多い

まずは安く始めたい方は Mountain Warehouse か Grove Outdoors、登山靴をきちんと合わせたい段階になったら Robinson's Outdoor Store、数日の縦走に向けた装備を揃えるなら Valhalla Pure Outfitters、という使い分けができます。

最新の営業時間や在庫は、各店の公式サイトでご確認ください。

短期の滞在で、一度しか使わないなら

ザック・浄水器・衛星通信機といった高額なギアを、旅行のあいだに一度しか使わないという場合もあると思います。

レンタルの取り扱いについては、今回確認した各店の公式ページには記載がありませんでした。 必要になりそうなら、購入の前に店へ直接お尋ねください。 中古で安く揃えるなら、委託販売の Grove Outdoors という選択肢もあります。

熊よけスプレーは現地で買い、現地で手放す

熊よけスプレー(ベアスプレー)は、飛行機の機内持ち込みも預け入れもできません。 カナダ航空運輸保安庁(CATSA)とカナダ運輸省の禁止品目に、動物忌避スプレーが含まれているためです。

これは日本からの便に限りません。バンクーバー〜ビクトリアのような国内線でも同じです。 買う場所とタイミングを、移動手段に合わせて決めてください。

移動手段熊よけスプレー
飛行機(国際線・国内線とも持ち込み不可(機内持ち込み・預け入れのいずれも)
BCフェリー車に積んで持ち込めます。 ただし危険物の扱いで、車内に固定すること。最終的な可否はターミナルの担当者が判断します

つまり、バンクーバーから飛行機で入るなら、ビクトリアに着いてから買うことになります。フェリーで車ごと渡るなら、持って移動できます。

使わずに余ったら

持ち帰れないので、現地で手放す必要があります。 キャピタル地域圏(CRD)のハートランド公共ドロップオフ・デポが、家庭系有害廃棄物として無料で引き取っています。

持ち込む際は、ノズルを結束バンドで固定し、缶をジップロック袋に入れてください(CRDの指定)。到着時に、計量所の係員へ何を持ち込むかを申告します。

リサイクルの回収に出してはいけません。 加圧された容器で、選別の途中で穴が開いたり潰れたりする危険があります。

まとめ

  • 装備は段階で揃える。半日のコース、一日のコース、数日の縦走で必要なものが変わる
  • ビクトリアは泥・濡れた岩場・木の根が多い。グリップのある防水靴が最初の一歩
  • レインジャケットは必携、折りたたみ傘は役に立たない
  • 中級からは上下の防水透湿ウェアと、ザックカバー+パックライナーの二重防水
  • 冬は予備の水1リットル・目立つ色の緊急シェルター・日没前に戻る時間管理
  • ウェストコーストトレイルはザックが体重の25〜30%以内新品の靴で臨まない
  • 熊よけスプレーは飛行機に持ち込めない(国内線も同じ)。BCフェリーなら車で運べる。余ったらハートランドのデポへ無料で持ち込む
  • 肌に近い層は化繊かメリノウールコットンは濡れると乾かず体温を奪う

「重いから置いていく」で痛い目に遭ったのは、いつも上着と水でした。迷ったら持って行くくらいで、ちょうどよいと思います。

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