「カナダの冬」と身構えて来ると、ビクトリアの冬は拍子抜けするかもしれません。かといって「まったく降らない」わけでもありません。この記事では、雪がどれくらい降り、どれくらい残るのかをカナダ環境・気候変動省(ECCC)の平年値で確かめたうえで、気温のわりに寒く感じる「wet cold」の正体冬の日照時間雪が降った日の街の様子、そして何を着ていけばよいかを、私自身が過ごした冬の実感を交えてご案内します。

結論:雪は降ります。ただし「積もり続けない」

ビクトリアに雪は降ります。 ただし、降った雪が積もったまま冬を越すことは、まずありません。

これをはっきり示すのが、積雪の深さの「中央値」です。カナダ環境・気候変動省の1991〜2020年平年値によれば、ビクトリア空港の積雪深の中央値は、12月も1月も2月も0センチでした。

平均では12月と1月に1センチが立ちますが、中央値が0ということは、「雪が地面に残っている日」のほうが少数派だという意味です。降る日はあっても、たいていその日か翌日には消えている。これがビクトリアの冬です。

数字で見るビクトリアの冬

気温

市街地(ゴンザレス観測所)の1991〜2020年平年値です。

項目12月1月2月
日平均気温5.5℃5.8℃6.1℃
日最高気温7.5℃7.8℃8.6℃
日最低気温3.6℃3.8℃3.6℃

真冬でも日平均が5℃台です。さらに目を引くのが次の日数です。

最低気温の条件年間の日数
0℃以下10.4日
−2℃未満4.4日
−10℃未満0.0日

氷点下になる日は1年に10日ほど。−10℃を下回る日は、平年値では年に0日です。

降雪量

雨と雪の内訳が公表されているのは空港の観測所なので、こちらを使います。

項目11月12月1月2月3月年間
降雪量3.6cm12.4cm11.2cm7.1cm3.7cm38.6cm
積雪深の中央値0cm0cm0cm0cm0cm0cm

年間の降雪量は約39センチで、半分以上が12月と1月に集中します。3月にも4センチ近くあり、春先の雪はめずらしくないことが数字にも表れています。

「ビクトリア」でひとくくりにできない

ひとつ注意点があります。同じビクトリアでも、市街地と空港では数字が違います。

空港はダウンタウンから北へ約25キロのサーニッチ半島にあり、日平均気温は市街地より1℃ほど低くなります(1月で4.6℃)。上の降雪量はこの少し内陸寄りの数字なので、海に面したダウンタウン周辺はもう少し雪が少ないとお考えください。数字を見るときは、どこの観測所の値なのかもご確認ください。

カナダの他の都市と比べると

同じ1991〜2020年平年値で並べます。

地点1月の日平均気温年間降雪量
ビクトリア(空港)4.6℃38.6cm
バンクーバー(空港)4.1℃36.6cm
トロント(空港)−5.0℃114.5cm
モントリオール(トルドー空港)−9.2℃216.6cm

トロントとは10℃以上、モントリオールとは14℃近い差があり、降雪量もトロントの3分の1、モントリオールの5分の1以下です。

ただし、バンクーバーとはほとんど変わりません。 数字の上ではビクトリア空港のほうがわずかに多いくらいで、「バンクーバーより雪が少ないから」という理由で選ぶと期待どおりにはならないかもしれません。

気温のわりに寒く感じる——「wet cold」

数字ほど暖かく感じないのがビクトリアの冬です。

市街地の年間降水量は674.9ミリと日本の多くの地域より少ないのに、降水のあった日数は年間159日。1年の4割以上の日に、いくらか降っています。一度に多く降るのではなく、弱い雨が長く続くのがこの土地の降り方で、空気が湿ったまま気温が5℃前後で推移するため、体感は数字より低くなります。

冬は日が短い

初めての冬に戸惑いやすいのが日照時間です。冬至の前後は、朝8時台にようやく明るくなり、夕方4時台には暗くなります。 夏はこれが完全に逆転します。

6月下旬の夜9時過ぎ、まだ明るいソークのウィッフィン・スピットの海辺

この写真は6月下旬の夜9時過ぎに撮ったものです。夕食もシャワーも済ませ、そろそろ寝ようかという時間帯なのに、まだ外が明るい。時間を間違えたかと思うほどでした。

私がビクトリアに着いたのは2001年の夏でした。この明るさを先に知ってしまったことが、初めての冬の落差を大きくしたのだと思います。夕食の前にはもう暗い、という日が何か月も続きます。

日照時間が短くなると、体の中でつくられるビタミンDも減ります。カナダ保健省(Health Canada)は、冬の季節・日焼け止め・肌の色・年齢・衣服で覆う面積が、皮膚でのビタミンD生成を減らす要因になるとしています。そのうえで、51歳以上の方には1日400 IU(10マイクログラム)のサプリメントをすすめており、2〜50歳についても、ビタミンDを含む食品を毎日とらないのであれば同量が適切だとしています。

現地でも、冬にビタミンDを補う話はよく聞きます。日中のうちに少しでも外に出て光を浴びることとあわせて、頭に置いておくとよいと思います。持病がある方や薬を服用中の方は、医療機関にご相談ください。

雪が降った日、街はどうなるか

数字では伝わらない部分を、実際に居合わせた3回の雪からご紹介します。

2002年3月——冬をやり過ごしたあとの大荒れ

2001年の夏に来て迎えた最初の冬は、11月から2月までほとんど雪が降りませんでした。 そろそろ暖かくなるだろうと思っていた3月に、まとめて降りました。

2002年3月の雪の日、ビーコンヒルパークの一面の雪の上に残る自分の足跡

前日から降り始めて、10〜15センチほど積もったと思います。当時住んでいたヒルサイドからジェームズ・ベイまで歩き、写真をたくさん撮りました。

一方で街は、道路にほとんど積もっておらず、車は普通に走っていました。 白くなっていたのは公園の芝生やグラウンドで、子どもたちが遊んでいます。学校もスーパーも通常どおり、お昼前には天気が回復して雪もほとんど溶けていました。

同じ月、山の上は別世界

その9日後、今度は友人たちが雪ではしゃぎ、マウント・フィンレイソンへ登りに行くことになりました。

雪の残るマウント・フィンレイソンの登山道を友人たちと歩く

山の中では15〜20センチほど積もっていました。街では溶ける雪も、標高が上がれば残ります。この日の様子はゴールドストリーム公園のハイキング記事に書きました。

2022年11月——季節外れの雪と、夜の運転

3回目はそれからずいぶん経った2022年11月初旬で、11月としては季節外れ15〜20センチでした。

夜のジェームズ・ベイの住宅街、車道にも雪が積もっている

車を使うなら、冬用タイヤの規制を確認する

ダウンタウンだけか、北へ向かうか

規制は路線ごとに決まっています。ダウンタウン周辺だけを回る観光なら、規制区間に入ることはまずありません。

一方、ハイウェイ1号を北上してマラハットを越える場合(ダンカンやナナイモ方面)は規制区間に入ります。マラハットはビクトリアとダンカンの間の区間です。この区間の規制が3月31日までなのは、山越えの峠道ではないためで、峠を越える路線は4月30日まで続きます。

ゴールドストリーム州立公園は、このマラハット区間の南の入口にあたる位置にあります。冬に車で向かうなら、規定を満たすタイヤで行くほうが安心です。

レンタカーを借りるときは、規定を満たすタイヤが付いているかを確認してください。 どこからが規制区間かは、道路に立つ規制標識で示されています。最新の内容はブリティッシュコロンビア州の公式サイトでご確認ください。

何を着ていけばよいか

気温の数字だけで服を選ぶと、たいてい寒い思いをします。前述のマフラー・帽子・耳あてが要ですが、上着は時代とともに変わりました。

2002年当時はダウンが一般的ではなく、私はバンクーバーで買った黒い厚手の革ジャンで過ごしていました。20代後半で元気だったこともあり、それで足りています。2022年に訪れたときは、妻も私もダウンでした。軽くて暖かいダウンは、ビクトリアでも十分に活躍します。

素材については、ひとつ目安があります。ウールのコートより、撥水・防水性があってフードの付いたジャケット(防水加工のダウンを含む)のほうが、この土地では扱いやすいと思います。強い雨は少ない代わりに弱い雨に長時間さらされるので、表面で水をはじいてくれるものが助かります。風のある日は、フードがあると確実です。

室内の心配はいりません。どの部屋にも壁の下側にコイルの暖房が付いていて、つまみを25℃あたりに回しておけばTシャツで過ごせました

まとめ

  • 雪は降るが、積もり続けない。 空港の積雪深の中央値は12月〜2月とも0センチ
  • 年間降雪量は約39センチ12月と1月に集中し、3月の雪もめずらしくない
  • 最低気温が−10℃を下回る日は、平年値では年に0日。氷点下になる日も年10日ほど
  • トロントより10℃以上、モントリオールより14℃近く暖かい。ただしバンクーバーとはほぼ同じ
  • 数字ほど暖かく感じない。年159日の降水が生む wet cold に備え、マフラー・帽子・耳あてを用意する
  • 冬は16時台に暗くなる日中に光を浴びること、カナダ保健省がすすめるビタミンDの補給を頭に置いておく
  • アウターは撥水・防水でフード付きが扱いやすい
  • 市街地でも年に2〜3回は道路に積もるマラハットを越えて北へ向かうなら冬用タイヤ規制の区間に入る。レンタカーはタイヤを要確認

「雪の降らない温暖なカナダ」を期待して来ると、少し違うかもしれません。けれど、厳しい寒さを避けながらカナダの自然の中で過ごしたいという方にとって、ビクトリアの冬は十分に穏やかです。

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