「カナダでハイキングを始めてみたいけれど、いきなり本格的な山は不安」——そんな方に、私が最初におすすめしているのがマウントダグラス公園(Mount Douglas Park)です。ビクトリアのダウンタウンから車で約15〜20分。往復1〜2時間の道のりで、頂上からは海と街を一望できます。この記事では、トレイルの選び方、アクセスの注意点、頂上からの眺めの見どころまで、実際に5回以上歩いた私の体験を交えてご案内します。

マウントダグラス公園(PKOLS)とは

マウントダグラス公園は、ビクトリア近郊のサーニッチ地区(District of Saanich)にある広さ188ヘクタールの公園です。サーニッチ半島で最大の都市林とされ、園内には21キロメートルを超えるトレイルが張り巡らされています。頂上の標高は225メートル。市街地からこれだけ近い場所に、これほどの森と眺望がそろっている公園は、そう多くありません。

そしてこの山には、もう一つの名前があります。PKOLS(ピコルズ) です。これはセンチョーセン語(SENĆOŦEN)における呼び名で、ウサネッチ(W̱SÁNEĆ)の人々にとって歴史的・文化的に重要な場所とされています。公園の正式名称としてPKOLSが併記されるようになったのは、2022年8月15日のことでした。

アクセスと駐車場|ゲートの開放時間に注意

公園へはビクトリアのダウンタウンから車で約15〜20分。道路の混み具合や出発地点によって前後しますので、時間には少し余裕を見ておくと安心です。駐車場は複数ありますが、海側のビーチ側駐車場が主要な駐車場所として案内されており、比較的台数に余裕があります。

迷いやすいのは、頂上へ続くチャーチル・ドライブ(Churchill Drive)のゲートです。ここには時間による通行規制があります。

  • 午前中は車両進入禁止。歩行者と自転車のための時間帯です(移動用の補助機器は除きます)
  • 正午から午後10時までは一般車両が通行できます
  • ゲートは午後11時に施錠されます
  • 積雪・凍結時や、祝日を含む連休には閉鎖されることがあります

つまり、午前中に登る場合は徒歩か自転車のみ。静かな環境で安全に歩けるよう配慮された仕組みです。

なお、通信塔の工事などで長期間ゲートが閉鎖されることもあります。訪れる前にサーニッチ地区の公式サイトで最新の開放状況を確認してください。

車で頂上まで行けます|歩くのが難しい方へ

意外に知られていないのですが、マウントダグラスは車で頂上近くまで上がれます。 正午以降にチャーチル・ドライブのゲートが開いていれば、頂上直下の駐車場まで車で行けるのです。

「ハイキングは体力的に少しつらい」「夕日だけ見たい」という方や、ご高齢のご家族と一緒に訪れたい方にとっては、これはうれしい選択肢だと思います。頂上駐車場から展望地点までは、ごく短い距離です。

トレイルの選び方|緑・青・黒の色分けを確認する

園内のトレイルは、難易度によって3色に色分けされています。

難易度
初級(Easy)
中級(Moderate)
上級(Difficult)

21キロメートル以上のトレイルが交差しているため、歩き始める前に案内板の地図をよく見て、どの色のルートをたどるかを決めておくことをおすすめします。同じ「頂上へ行く」でも、選ぶ道によって体力の使い方がまったく変わります。

アーバイン・トレイル|急坂と岩場を登る歩きごたえのあるルート

頂上を目指す代表的な道の一つが、アーバイン・トレイル(Irvine Trail)です。

急な坂、岩場、地表に露出した木の根が続き、足元は決して平坦ではありません。片道約2キロメートル、往復で約1.5〜2時間を見ておくと無理がないと思います。私の体感としては、初めてのハイキングにしては少し歯ごたえのある道です。

ウィテカー・トレイル|原生林の森林浴を楽しむルート

一方、山頂を目指さず森そのものを味わいたい方には、ウィテカー・トレイル(Whittaker Trail)方面がおすすめです。麓の森を穏やかに巡る区間があり、ダグラスファー(Douglas fir)やレッドシーダー(Red cedar)の原生林を眺めながら歩けます。

急ぐ必要はありません。木漏れ日の下をゆっくり歩くだけで、十分に満たされる道です。市街地からこれほど近い場所に、こうした森が残っていること自体が、この公園の価値だと感じています。

頂上からの眺め|東はハロー海峡、南はダウンタウン

頂上に立つと、視界が一気に開けます。方角ごとに、見えるものが違います。

頂上から望むハロー海峡とサンフアン諸島

東の方向には、ハロー海峡(Haro Strait)とサンフアン諸島(San Juan Islands)が広がります。天気に恵まれた日には、アメリカ側にそびえるマウント・ベーカー(Mount Baker)の姿を望めることもあります。

南の方向には、ビクトリアのダウンタウンとインナーハーバー(Inner Harbour)、そして遠くにアメリカのオリンピック山脈(Olympic Mountains)が連なります。

海、島、街、そして対岸の山並み。この四つが一度に視界に入る場所は、ビクトリア近郊でもそう多くありません。

おすすめの時間帯と季節|7月上旬、夜10時のサンセット

私がいちばんおすすめしたいのは、夕方のサンセットの時間帯です。

そして、時期でいえば7月上旬が格別です。理由は、この時期のビクトリアは日没が夜10時ごろになるためです。夜の10時前後にサンセットを眺める——日本ではなかなか経験できない時間帯の夕景です。夏至前後の日の長さは、この街で過ごす楽しみの一つでもあります。

ビクトリアの季節ごとの気候や日照については、ビクトリアの気候ガイドでも詳しく紹介しています。

目的別のモデルプラン

同じ公園でも、目的によって過ごし方はまったく違います。私がよくおすすめする三つの型を挙げておきます。

① 夕景だけを楽しむ|所要30分〜1時間 正午以降にゲートが開いていることを確認したうえで、日没の1時間ほど前に車で頂上駐車場へ。展望地点で夕景を眺めて下ります。体力に不安がある方や、ご高齢の方とご一緒するときに向いています。

② しっかり登る|所要1.5〜2時間 アーバイン・トレイルを使って頂上を往復します。急坂と岩場がありますので、運動靴かハイキングシューズで。ビクトリアでの本格的なハイキングに向けた、最初の足慣らしになります。

③ 森を歩く|所要1〜2時間 頂上を目指さず、麓の森を巡ります。原生林の中をゆっくり歩き、途中で腰を下ろして過ごす。雨上がりの森の匂いは、この過ごし方でしか味わえません。

いずれの場合も、日没後は急に冷え込みます。時間に余裕を持った計画を立ててください。

服装と持ち物、歩く前に知っておきたいこと

初めて歩く方に向けて、押さえておきたい点をまとめます。

  • :アーバイン・トレイルのような急坂・岩場を歩くなら、運動靴かハイキングシューズを。サンダルは避けてください
  • 上着:夕方以降は気温が下がります。夏でも羽織るものを1枚
  • 地図の確認:出発前に案内板で色分け(緑・青・黒)を確認し、ルートを決めてから歩き始める
  • ごみは必ず持ち帰る:文化的にも生態的にも大切に守られている場所です
  • 飲み水:短時間のコースでも、夏場は持参をおすすめします

野生動物への備え

バンクーバー島の自然の中を歩く以上、野生動物への基本的な備えは知っておきたいところです。トレイルの入口には、クマやクーガー(ピューマ)への警戒を促す看板が掲示されていることがあります。

BC Parks(ブリティッシュコロンビア州立公園)は、野生動物との不意の遭遇を避けるため、複数人で歩くこと、話し声や歌で自分の存在を知らせること、イヤホンを外して周囲の音を聞けるようにすることを推奨しています。

具体的な対処法は、クマ・クーガーとの遭遇に備える|バンクーバー島ハイキングの野生動物安全対策にまとめました。バンクーバー島でハイキングをされる前に、必ず目を通しておいてください。

マウントダグラス公園のサインの前で

まとめ

マウントダグラス公園(PKOLS)は、ダウンタウンから車で約15〜20分という近さでありながら、原生林と大パノラマの両方を味わえる場所です。急坂を登るアーバイン・トレイルも、森を穏やかに巡るウィテカー・トレイル方面も、どちらもこの公園の魅力です。体力に自信がなければ、正午以降に車で頂上まで上がるという方法もあります。

ビクトリアでのハイキングの第一歩として、これほど間口の広い場所はないと思います。ゲートの開放時間と地図の色分けだけ確認して、まずは歩いてみてください。

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