ビクトリア近郊の森を歩いていると、人の気配がふっと消える瞬間があります。豊かな自然のすぐ隣に、野生動物の世界があるということです。この記事では、クマ・クーガー(ピューマ)との遭遇を防ぐ方法と、万が一出会ってしまったときの対処を、BC Parks(ブリティッシュコロンビア州立公園)とBC州政府の公式情報に基づいてまとめました。バンクーバー島でハイキングをされる前に、必ず目を通しておいてください。

この記事の情報源について

野生動物の安全対策は、命に関わる情報です。そのため本記事の対処法は、BC Parksおよびブリティッシュコロンビア州政府(Province of British Columbia)が公開している公式ガイダンスに基づいて記述し、独自の解釈を加えていません。 私自身の体験談は、公式情報とは区別できるよう吹き出しで示しています。

制度や推奨内容は更新されることがあります。出発前にBC ParksおよびBC州政府の公式サイトで最新情報をご確認ください。

バンクーバー島でクマ・クーガーに出会う可能性

バンクーバー島には、ブラックベア(クロクマ)とクーガーが生息しています。ビクトリア近郊のトレイル入口にも、警戒を促す看板が掲示されている場所があります。

とはいえ、必要以上に恐れる必要はありません。多くのハイカーは、生涯を通じて一度も遭遇しないまま歩き続けています。大切なのは、遭遇の確率を下げる歩き方を身につけておくことと、出会ってしまったときにどう動くかを事前に知っておくことの二つです。

路上でブラックベアと遭遇する

クーガーについては、私自身に遭遇の経験はありません。ただ、忘れられないニュースがあります。2015年10月、ビクトリアのダウンタウンに近いジェームズ・ベイ(James Bay)地区に、若いクーガーが迷い込みました。州議事堂のすぐ近くです。保護管理官(Conservation Officer)と警察が捜索し、ミシガン・ストリート(Michigan Street)のアパートの裏手で麻酔銃により捕獲、その後、市街地から離れた自然へ戻されました。

街中でさえ、こうしたことが起こり得る土地なのだと実感した出来事でした。

遭遇を防ぐための基本|BC Parksが推奨する歩き方

BC Parksは、野生動物との不意の遭遇を避けるため、次のような点を推奨しています。

  • 歩く時間帯を選ぶ:野生動物の活動が活発になる夜明け・夕暮れ・夜間を避け、午前中から午後遅くの時間帯に歩く
  • 音を立てて歩く:大きな声で話す、歌うなどして、動物を驚かせないよう自分の存在を知らせる
  • 複数人で歩く:仲間と一緒に、離れすぎないように行動する。子どもはグループの真ん中に入れ、先に行かせたり、遅れさせたりしない
  • イヤホンを外す:動物が発する警告音を聞き取れるようにしておく
  • 決められたトレイルを歩く:整備された道から外れない
  • ペットはリードにつなぐ:野生動物と遭遇する可能性が高い場所には連れて行かない
  • カラスやワタリガラスが多く集まっている場所は避ける:捕食動物が仕留めた獲物の近くに集まっていることがあるため
  • ベアスプレーを携帯し、有効射程を事前に確認しておく

食べ物とごみの扱い

野生動物を人里や登山道に引き寄せる最大の要因は、食べ物の匂いです。BC州では、危険な野生動物に餌を与えることは法律で禁止されています。

ハイキング中は、食べ残し・包装・果物の皮を含め、持ち込んだものはすべて持ち帰ることを徹底してください。「自然に還るから」と生ごみを残していくことも、動物を人に慣れさせる原因になります。

クマに出会ってしまったら|BC州政府の公式手順

以下は、ブリティッシュコロンビア州政府が公開している対処法です。

BC Parksはさらに、倒された場合はうつ伏せになって動かず、後頭部を守ること、そしてクマが捕食目的で近づいてくると判断される場合は反撃することを示しています。

クーガーに出会ってしまったら|BC州政府の公式手順

クーガーは夕暮れから夜明けにかけて活動が活発とされています。対処法はクマとは異なる点が多く、混同しないよう注意が必要です。

クーガーが強い関心を示したり、あとをついてきたりする場合は、強気に対応するとされています。目をそらさず、歯を見せ、大きな音を立てる。 それでも離れない場合は、石や木の枝を手に取って身を守るよう記載されています。

万一襲われた場合は、反撃すること。「自分は獲物ではなく脅威である」と認識させるため、顔と目を狙って、石・枝・ベアスプレー・持ち物など使えるものすべてを使うよう示されています。

クマとクーガー、対処が正反対になる点

この記事でいちばん覚えて帰っていただきたいのが、ここです。同じ「大型の野生動物」とひとくくりにして覚えていると、とっさの場面で取り違えます。

いっぽうで、共通しているのは次の点です。こちらは動物を問わず同じ行動になります。

場面クマクーガー
走る走らない走らない
背を向ける背を向けない背を向けない
子どもそばに引き寄せ、小さな子は抱き上げるすぐに抱き上げる
後ずさり逃げ道を確保してゆっくり後ずさる逃げ道を確保してゆっくり後ずさる

ベアスプレーについて

BC Parksは、ベアスプレーを携帯し、その使い方を理解しておくことがクマ対策として重要だとしています。

  • 購入したら、使用方法の説明を必ず読む
  • 有効射程を出発前に確認しておく
  • すぐ手が届く位置に装備する(バックパックの奥にしまい込まない)

現地のトレイル入口の看板でも、「ベアスプレーを手の届く位置に」という表現をよく見かけます。とっさの場面で取り出せなければ、持っている意味がありません。

日本から持って行くことはできません

ここは、渡航前にぜひ知っておいていただきたい点です。

日本の空港の手荷物検査でも、航空会社の規定でも同様の扱いになります。「せっかく日本で買ったのに空港で没収された」という事態を避けるため、ビクトリア市内のアウトドアショップなどで現地調達することを前提に計画してください。

保安検査場で見つかった場合、CATSAは警察へ通報する運用になっているとされています。うっかり荷物に入れたままにしないよう、ご注意ください。

通報先|保護管理官(Conservation Officer Service)

攻撃的な個体を見かけたとき、市街地で目撃したとき、公共の安全に関わると感じたときは、BC州の保護管理官(Conservation Officer Service)へ通報します。

  • RAPP通報ダイヤル:1-877-952-7277
  • テラス(TELUS)の携帯電話からは #7277

「大げさかもしれない」と迷う必要はありません。通報の積み重ねが、動物と人の双方を守ることにつながります。

まとめ

クマやクーガーへの備えは、自然を怖がるためのものではなく、安心して自然を楽しむための準備です。押さえるべき要点を整理します。

  • 夜明け・夕暮れ・夜間を避け、複数人で、音を立てて歩く
  • イヤホンを外し、決められたトレイルを歩く
  • 食べ残しとごみは必ず持ち帰る
  • ベアスプレーを手の届く位置に携帯する。飛行機には持ち込めないため、必ず現地で購入する
  • クマは目を見つめない/クーガーは目をそらさない——対処が正反対であることを覚えておく
  • 異常があれば 1-877-952-7277 へ通報する

この記事は、当サイトのハイキング記事すべてに共通する「必読ガイド」として位置づけています。歩きに出かける前に、もう一度読み返していただければ幸いです。

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